青春メトロノーム
ぐんっと首をあげて颯太の顔を見た。
颯太は、もう見上げなきゃいけないぐらい身長が伸びていた。
隣を歩くとそれが実感させられた。
けれど、玩具みたいな青いペンキが塗られた夜空は嘘っぽくて、さっきのメトロノームに塗られた安っぽい色で艶もない。星もない。
そんな欠陥だらけの夜なのに、颯太は隣に居るだけで泣きたくなりそうなほど安心できた。
身長も変わってる。声も低くなった。
おじさんと違って知的な雰囲気は無いけど、代わりに守ってくれそうな力強さはある。
「なんだよ、じろじろ見て。俺に暁の事を聞いても答えなんてでねーよ」
「なんで?」
「まず百花があいつを見てないのに、俺の言葉なんて信じねえだろ」
「そんなことないよ! 皆、分からないことばかり言うから、颯太とはちゃんと会話出来たら良いなって思ってる。今日、暁の顔を見たら息苦しくて、なんだか私の場所じゃないって思っちゃったし」