青春メトロノーム
メトロノームの針は、真ん中で止めてください。
私は夢を見ていた。
三人で、おばさんの大切にしていた花壇からピンクの花を抜いて、花の冠を作るの。
おばさんにすっごく怒られるけど、こっそり三人で顔を見合わせて笑う。
二人が仲良く私の頭にその花の冠を載せてくれる。
私が嬉しくてにこにこ笑う。
そんな夢を、その花びらのじゅうたんの上で見ていた。
まだ見たくない。
目覚ましを探す手は、宙をさまよい迷子のまま。
空虚な笑顔の私に、幻でいいので初めてのキスをして。
メトロノームは正確なリズムを刻むし、真ん中にしか止まらないから要らない。
このまま花びらの上で、私を誰も起こさないで。