青春メトロノーム



カシャンという、自転車のサイドスタンドを乱暴に蹴りあげる音で目が覚めた。


天井目掛けて手を伸ばしても何も掴めず、空気を切る。

枕元の携帯を見てみれば、まだアラームが鳴る時間よりだいぶ早かった。


けれど私はむくりと起き上がり、制服に着替えた。
鏡に映った私は、颯太の言う酷くブスな顔。
それでも、どうしても。
初めてキスする相手は颯太が良かったんだと思う。

変わってしまった暁を、裏切りだと感じてしまっていたし。

「あら、早いのね」

制服に着替えて降りてきた私に、お父さんのお弁当を鞄に仕舞っていたお母さんが驚いて手を止める。


「颯太の自転車のスタンド蹴りあげる音がうるさかったの」

すでにオニギリとお弁当のおかずの残りらしきものが並べられているので、おにぎりを掴んで食べた。

「颯太くんって自転車持ってたかしら」

「暁が持ってるなら颯太も持ってるでしょ」


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