悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

「ほら、みろ。ちょっと美人だとお高くとまってよ」

「課長、ちょっと涼みましょう」

「あんなに男を見下した態度だと、気付いた時にはババアで、誰にも相手にされねーよなあ」

下品な笑い声とともに、思い切り指を刺されてるんですけど。
どこの課長だよ。会社名さえ分かれば、こいつがいる会社なんて絶対に取引してやらないのに。

「申し訳ありません。酔うと本当に暴走してしまって」

「良いんですよ。無能な上司だと大変そうですね」

「ああ!?」

酔っ払いの癖に耳は良いのかと思わず睨みつけると、そのタヌキみたいな腹のおっさんが一瞬で青ざめた。
女を馬鹿にしてるくせに、睨んだだけで怯むとはなんてダサい。
にっこりと笑ってやるが、そのタヌキ野郎の視線は私ではなくその後ろだった。

私も振り返ると、無表情の巧が立っていた。

「巧……」
「お高く止まってるんじゃなくて、本当にあんた達には高嶺の花なんですよ、うちの御令嬢は」
「ご、ご令嬢!?」

静かに淡々と笑っているはずの巧なのに、迫力があって思わず後ずさる。
巧は私を背に隠すと、タヌキ野郎を見下ろした。

足の長さから体型から、隣に並ぶだけで拷問に近い。
処刑中だろうか。
「ね、花巻保険会社の課長さん?」
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