悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「二人ともお酒がお強いですね。さっさと潰して、またシノと二人で飲みたかったんですが」
「……飲みに行くなら巧も一緒に行こうよ」
ちょうど池に掛った小さな橋の上で、キースは立ち止る。
「なぜ?」
「えーと、キースと二人きりで個室とか、ヤキモチ焼くからさ」
髪を触りながら、昨日の巧の様子を思いだして気恥ずかしくなる。
「では、――二人は昨日、私のおかげで上手く行ったんですね?」
悲しげな瞳で尋ねられ、咄嗟に両手を振って否定する。
「や、進展はないってか、無くもないけど、決定的じゃないって言うか。キースの片思いの相手よりは、私たちは時間かかるし」
「お互いの恋愛ルールのせいで?」
そう言われると、上手く否定できず、かといって笑って誤魔化せる相手でもないのでどんな表情をしていいのか正解が分からない。
「女性って好きな人の前では、こう、花が咲き誇りように美しくなります。甘く色香が舞って、思わず息を飲むほどです」
キースが日本語を綺麗に操ってるなあと、感心していると、その瞳が私を見透かすように覗きこんできた。
「シノは常に咲き誇っている美しい花だから、ヤキモチぐらいでは物足りないんじゃないかな?」