悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「え」
「単刀直入に言うと、私はシノをオーストラリアに浚ってしまいたい。タクミから奪って私がお姫様にしてあげたい」
キースの真っ直ぐな瞳と、蕩けんばかりの笑顔に、身体が震える。
いや、身体じゃなくて心臓が大きく高鳴って身体と心を揺さぶってるんだ。
はっきり何でも言ってしまうし、私は手を抜いたことなく真っ直ぐに生きてきた自覚はある。
だから男女ともに手を抜いていたりいい加減だった人には容赦ない言葉を浴びせてきた。
同じ空気を吸いたくないぐらい軽蔑していたかもしれない。
だから、高嶺の花だの、近寄りがたいだの、気が強そうで恋愛対象ではないと、思われていた事も理解している。
だから、そんな言葉を私に吐く人がいるなんて、思ってもみなかった。
この痛いぐらい大きく波打つ心臓の原因は、驚愕だと思う。
「まるでプロポーズみたいで、素敵だね。でも、私、今の仕事が楽しいから、キースと一緒にオーストラリアは無理かな」
巧を理由に断りたくなかったのでそうはっきり告げると、すうっとキースの目が冷たく沈んでいく。
「私の会社との契約後、副社長がこちらのプロジェクト海外事業本部の方へ移り、タクミが副社長の座につくとしても?」