悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
廊下を歩いていくと、それぞれの個室から色んな声が聞こえてくる。
接待だろうか、家族と食事だろうか、こんな予約がなかなか取れない高級料亭に居る人たちなんて、きっとそれなりの地位になる人や裕福な人たちだろう。
私は生まれた時からそんな世界に居た。だから、自分はその場にいても恥ずかしくない自分で居たかった。
今もその心情は揺らいでいないし、誰に何を言われてもそれだけは自信を持っている。
だから女子社員が負け犬の遠吠えを給湯室で言ってようが別にどうでもいい。
私は努力は好きではないが、自分を磨いていく自信はある。
私は、自分を宝石だと信じて磨いてきた。
だから襖の向こうで二人が何を言おうと、揺るがない。
「だからな、母さんだってお前が結婚するのを楽しみにしてるんだ」
「あの子、素直そうで良い子じゃないか。お前が決めていいんだぞ」
信じていた。
でも巧の前で宝石じゃなくて、石ころみたいな普通の子を薦めるのが許せない。
「……ふざけるな。とその酔っ払った口に天ぷらでも突っ込んでやりましょうか?」
襖の向こうで、巧が静かにそう告げた。