悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

それなのに私は、巧ではなく会社や結婚までの計算ばかりしていた。

巧を見ようとしていなかった私に、巧がプロポーズをしてくれるわけもない。

全部、私のせいだ。

「仕事に私情を挟んでいた、と理解して良いのでしょうか?」

私を押しのけてキースが部屋へ入ると、タヌキ二人が固まったのが分かった。

「まあ、確かにシノはこんな古臭いしきたりの中にいるよりも、私と共に過ごした方がきっと幸せでしょうね」

「キース!」

「シノをオーストラリア支社に秘書として連れて行くのならば、私は友達のふりを止めて本格的に彼女を口説きますよ? 彼女を餌にしようとしていたお二人さん」

キースの顔が恐ろしいほどに綺麗に笑っている。
綺麗な作り笑いの顔だ。

「私はシノの婚約者がシノと結婚を渋っていると社長に聞いた。だからシノがオーストラリアに来るのを喜んでいた。今度は絶対に思いを伝えるってね」

そう言って巧を見る。巧ももう余所行きの笑顔を貼りつけることもせず、キースを睨んでいた。

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