悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「女性をお姫様にできない貴方にシノは渡したくない。絶対に幸せにできない」
「ずっとオトモダチのふりを長くしていたために恋愛感情も凭れてない君が俺に言うの? それを」
巧も挑発的に笑ったけれど、キースは鉄壁の笑顔を崩さなかった。
「どちらにせよ、彼女がオーストラリアに行くか、君がオーストラリアで社長に就任するか。離れることは確定なんじゃないですか?」
「……ごちゃごちゃうるせえな。俺と志野の問題に、タヌキ二人と王子が一人、首を突っ込むだけの癖に」
巧は立ち上がると、襖に隠れていた私をいとも簡単に見つけると腕を掴んだ。
「もう一つ、選択肢がある。俺と結婚して二人でオーストラリアへ行く、とかな」
「え、ええ?」
「……君って王子様みたいな顔なのに、女性が喜ぶ言葉やムードも知らないの?」
呆れたような、小馬鹿にするような苦笑をキースがするが、巧の目は本当だった。
確かに離れるよりは、その決断の方がいい。
間違えていない。
でも、どうしてだろう。
ちっとも嬉しくない。いや、全く嬉しくない。
さっきまで巧が私のことを世界で一番よくわかってると思って嬉しかったのに、急激に私のテンションが下がっている。