悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「シノ、どうしました?」
私の異変に気付いたのは、腕を掴んでいる巧ではなくキースだった。
「どうして大事な言葉を今、言っちゃうのよ!」
「志野?」
「一生に一度のプロポーズを、たぬき親父二人とキースの挑発でぽろっと言ってしまうなんて、信じられないっ」
「はあ!?」
「馬鹿!」
てっきり冷静に淡々と説教されると思ったのだろタヌキたちと、巧が呆然としている。
私だって自分が信じられなかった。
どうして、こんなに腹立たしいのだろうか。
自分でも呆然としていると、廊下の向こうからハンカチで手を拭きながら歩いてくるキースの部下がやってきた。
部下が席を立ったので、あんな私情バンバン入った会話をしていたんだ。
「帰りましょう、送ります。シノ」
キースが私の両肩を掴み、巧から引き剥がした。
「シノがどれほど傷ついているのか分からない君たちは本当に失望しました。女性の扱いが下手な方々が仕事が出来るとは思いません。失礼致しますね」
「え。キース君?」
「ちょっと」
慌てるタヌキを無視し、私は肩を抱かれたままキースと一緒に歩き出す。
「志野」
巧に名前を呼ばれたけれど、振り返りたくなかった。