悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

気付いたのは、キースの言葉かもしれないし、私の前でうろちょろする目障りな石ころの存在かもしれない。


でも私は、巧にお姫様にして欲しいんだ。

28歳の、今まで誰にも頼らずの孤高の中生きて来た癖に。

ロマンチックな恋愛やプロポーズに憧れて、なかなか型にとどまった巧との結婚に踏み切れなかった。

煮え切らない巧にやきもきしていたんじゃなくて、ちゃんとドキドキさせて欲しいと馬鹿みたいに夢を見ていたんだ。


「……シノ、泣かないで。君には初めての恋。初めて人を好きになった時なんて、掛け間違えたボタンのように、見た目は不格好でいいんですよ。どうして掛け間違えたのかなんて、自分でも理解できなくても良いんです」

「キース」

「ただ掛け間違えたボタンを外す時、一瞬夢から覚める。彼じゃダメだと思ったら、俺を選んでくださいね。世界一のお姫様にしてあげるから」


優しく、蕩ける甘い言葉。
キースの瞳と同じ、チョコレートみたいな甘い言葉。

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