悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?


その日は、ビジネスホテルに泊まった。
家で父からチラチラと申し訳なさそうな視線や話しかけられたりするのが嫌だったのと、父を理由に巧が家に来るかもしれないから。


安っぽいタオルで髪を拭きながら、自分の乙女思考に頭を抱えた。


翌日は出勤すると、受付や庶務課の女子社員がやたらとこちらに視線を送ってくるのに気付いた。
「何?」

一言、声をかければ逃げて行く癖に。

どうせ給湯室で私が言った発言でも広まったのかもしれないが、自分を磨く云々にも立てない石ころは努力して、そんな言葉を言われないようにすれば済み話だ。

「おはようございます。英田さん」
「立花さん……おはよう」

朝から知的で綺麗で、品のある立花さんを見て心が休まった。

「どうしたんですか? 周りを蹴散らす迫力で歩いていましたが」
「……私が居ない間、この会社の品性を保てるのは立花さんだけだからね」
「はあ」

意味がわからないと、少し首を傾げる姿さえ上品だ。
森元さんがしたら、本当に勉強してきたのかと呆れてしまう知性のない仕草なのに。

「最近のスケジュール、やたら飲み会だの接待だので巧が連れ回されてたのがおかしいと思ったの。でも巧が副社長に就任するってことなら話は早い」

「え、高永室長がですか?」

流石の立花さんもソレには目を丸めた。

「そ。で、私がオーストラリア支社設立にあたり、副社長と同行」

げんなりとため息を吐くと、立花さんが身を乗り出す。

「嫌です! 英田さんが居ない会社なんて安心できないです。社長はタヌキだし、高永さんの秘書にでもなったら女子社員の敵視が面倒だし!」

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