悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「志野」
挨拶も他の二人の事も見ていないような、真っ直ぐで良く通る声。
「おはようございます。高永室長」
「おはようございます。昨日はお疲れ様です」
竜崎の嫌みに耳を貸さずに私を見つめる。
その異様でただならぬ雰囲気に二人がたじろぐ。
「何か?」
「俺はお前と離れる気はないから。勝手に動くなよ」
「それは、巧の甘い言葉次第じゃないかしら?」
甘い言葉も態度もくれないくせに、とついつい可愛くない言葉を吐いてしまう。
それ以上は、他の社員も来たので口を噤んだ。
「今日、昼休憩時にちょっと抜けるわ。大丈夫?」
今日は出張していた社長は書類や会議に内容確認等で、副社長は海外赴任の件だろうが訪問者が二人入ってるだけで大きな動きは無い。
「どこにいくんだ?」
「キースの所じゃないから安心しといて」
ついツンツンしてしまう私に、片眉を上げたがすぐに小さく息を吐いた。
「タヌキ二人に腹を立ててるのは俺もだからな」