悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
段々と人が降りて行き、、最上階になったときには四人だけだった。
なのに最上階でエレベーターが開いてすぐに、飛び込んできたのはとびっきりの笑顔の森元さんだった。
「立花さん、閉めて」
「はい」
「え、嘘! 閉めないでえ!」
慌てる森元さんを無視し再び閉めようとしたら、巧が手を伸ばしてドアの隙間に入れた。
「下らないことをするな」
「おはよーございます。研修生の君がなんで此処にいるの?」
「はい。社長が出張のお土産を栄子さんに渡して欲しいって」
何も知らないような顔で、首を傾げつつ上目遣いで答える森元さんにいらっとする。
竜崎にまで媚びるなんてどんな神経をしているのやら。
「ソレ、貸して。私が届けるから」
「え、英田秘書がですか?」
「今日会いに行く約束をしてるの。それに社長ってことは私の父でしょ、意味分かる?」
手を出すと、渋々と言った形で土産を出して来た。
小さな紙袋で中身は分からなかった。
「何が入ってるの?」
「押し花の冊子って言ってました。手作りみたいです」
「そう。御苦労さま」
「もー。英田秘書ってばめっちゃ言い方冷たい。可哀相ですよ、こんな震えるチワワみたいな子に」
「竜崎君、うるさいから」
「貴方もさっさとエレベーターに乗ったらいかが?」
立花さんがわざわざエレベーターのボタンを押してくれたので、森元さんは頭を下げつつ乗り込んだ。
そして名残惜しげに巧を見たが、巧は腕時計を確認していて気付いていなかった。
「もう巧じゃないくて、私が次から教えるって言ったでしょ? それより一秒でもはやく戻って一つでも多く仕事を覚えてきて」
感情的にならないようにと思いつつも、そう吐き捨てるしか出来なかった。