悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「英国の貴族からもプロポーズされてる英田秘書から指導なんて幸せですよ」
「竜崎君!」
閉まていくドアに余計なことを言う竜崎に、私と立花さんが左右同時に足を踏みつけておいた。
「……お前、本当に森元には厳しいな」
「そう? 立花さんと竜崎君の研修の時はもっと優しかったわよ。優秀だったから」
秘書室に入り、自分達のパソコンを起動させ上に羽織っていたコートを脱いでいたら、巧が嘆息する。
「まあ、俺が悪いんだろうけどあんま苛めてやるな」
「それ私が公私混同して怒ってると思ってるならひっぱたくよ」
「……今日は一段と怖いことで」
蹴りでも入れてやろうかと思ったけれど、我慢しておいた。
「で、今日の夜は開いてるか?」
「ぷ。室長格好いいですね! まだ出勤したばっかですよ」
竜崎がそう言うと、巧が空気を読めと睨みつける。
「こいつは早く予約しておかないと、浚われてしまうんだよ」
浚われるわけないでしょ、と思いつつも内心では嬉しかったりする。
巧が焦っている姿はなかなか見れない。
「私は大丈夫だけど、未来の副社長はまたタヌキ二人に浚われるんじゃない?」
「んなわけない。いつもの居酒屋で同じ時間な。遅れるなよ」
頑なに、いや、少し意固地になってる巧が念を押す様に言う。
メールで済ませず直接言っちゃう当たり、巧らしいと言うか手段を選ばなくなってきている。