悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
昨日とは違う雰囲気に、竜崎も緊張してか口数が増えているし。
立花さんはプライベートだからと聞かないで居てくれるから助かる。
「よーし、皆おはよう! あ、志野ちゃん。昨日はごめんねー」
へらへらと笑いながら副社長が出勤してきたが私は一瞥するだけで、さっさと仕事を始めることにした。
「え、あ、志野ちゃんが好きなカフェのデリバリーでランチとかどう? 奢っちゃうよ?」
「それ、頼むの秘書の仕事ですから。それにお昼は用事があるので」
「よ、夜! たまには高永家で食事でもどうかな!」
「――夜は俺が先約ですけど」
副社長に、眼光鋭くお土産を渡しながら、威嚇するように去っていく。
「えっと」
「私と巧の問題なので、これ以上口を挟まないでください。それより仕事してくださいね、ちゃっちゃと」
他の部署から回ってきた書類を副社長の机に置くと、10センチ近くになった。
これを中身に眼を通してもらい、延々とハンコを押さなければいけない。
嫌になってしまう。
「……はい。すぐに」
「森元さんが秘書だったらもっと優しかったのになあとか思ってたら、スケジュール、もっとハードにしますからね」
「頑張ります」
ぴしっと背筋を伸ばした副社長は、真面目な顔で書類をチェックし出した。
仕事ができるのは分かってるし、忙しいのだから負担を減らせるなら減らしてあげたいが、公私混同はしない。
そう思いつつも、珈琲に砂糖を入れ忘れたのは、ただのうっかりミスだ。