悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「わー。数週間ぶりねえ。孫よりも会いに来てくれる志野ちゃんを見たら、駆けだしたくなっちゃった」
桃色の口紅が光る上品な笑顔のおばあさまに、私も顔が破綻する。
白髪を思いきってダークブラウンに染めて、秘密の花園に住む外国人みたいな雰囲気で今の生活を楽しんでいる。
「色々と聞きたいことがあったので乗りこんできちゃいました。とぼけても無駄ですからね」
「ふふ。では座ってくださいな。飲みモノを頼みましょう」
にこにこと笑う栄子おばあさまがコンシャルジュを見ると、すかさずメニュー本を取り出してくれた。
「珈琲をお願いします。さて、栄子おばあさま、誤魔化したらこの押し花の冊子のお土産渡しませんからね」
「あら! そのお土産、あの子に頼んでいたものだわ。どうかしら、森元さんは」
さすが栄子おばあさまのお気に入りだけある。
すぐに名前を出されて、笑顔に力が籠る。
「お仕事は全くできないし、頭の回転は遅いし、ミス連発だし、――でも巧の指導に着いて行けたようよ」