悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
それを言い終わると、一滴だけ涙が零れ落ちた。
森元さんに負けた自分が悔しかったわけじゃない。
「……自分を磨いてきたのは、会社の為じゃないって分かってるけど、結局こんな風に踊らされてなんか、悔しかったのかな。自分が公私混同してないのに、親がするなんてって」
なんだか自分で言っていて鼻がツンと痛くなってきたのでホットココアを飲む。
ついつい感情的になってしまう。
「でも一番ショックだったのは、栄子おばあさまに認められてないことです。可愛くない私より、やっぱ森元さんの方が――」
「違うのよ! 全く誤解よ。あああ、泣かないで頂戴。化粧も落ちちゃうわよ」
慌てふためくおばあさまが、花の香りがするハンカチを差し出してくれる。
そんな気使いまで、とても憧れる。
「あのね、貴方って自分でもなんでもしちゃうし、できちゃうでしょ? で、弱い子の気持ちが見えてないの。貴方と巧は夏休みの宿題を七月に終わらせちゃうけど、八月の最終日までやらないで慌てている子の気持ちって分からないじゃない? さっさとやらない本人が悪い、みたいな」
「そうかもしれないですけど」