悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「違います! 私達は電話を取っていません」
「じゃあその怯えた顔は何? ミスは誰でもあるけれど、こっちに落ち度がないのにこの状況を処理するのは私たちなのよ?」
栄子おばあさまが居るならば、どちらか両方に顔を出せば普段威張り散らした二人も縮こまるはず。
「処理なら、今、森元さんがして下さってますよ」
私達の前に、庶務課の竹口さんと女子社員数人が待っていたかのように現れた。
「何でも、花園様と森元さんは、ガーデニング仲間だそうで御もてなし中です。秘書課の皆さまが手を焼いている花園様が、森元さんの前だと孫を可愛がるおじいさんみたいに優しく笑うんですよ」
――森元さんが。
それには少し思うことがあったけれど、状況は理解できた。
含みを込めた言い方に、立場も分からない奴らだと見下したが、今はそれどころではない。
「社長は?」
「そろそろお帰りになられると思いここに待機してますが、タウンゼント氏と話があるからと竜崎と一緒に出かけておりまして急遽戻って来られているはずです」
「巧は三条様の所?」
「そうです。副社長と一緒に三条様と」
ここに、用事が終わって無ければキースも現れるわけだ。
大事な取引先三社がブッキングするという一大事なのに、会社がパニックになっていない。
それは、あの何も取り柄のない森元さんのおかげだと、周りの空気が言っているのが分かった。