悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「は、はい!」
ぱあっと明るい顔で振り返られた。
達成感で顔が破綻している。
「今回は貴方のおかげで助かったみたいね。それは素直に感謝するけど」
「いえ。花園さんは優しいおじいちゃんなので!」
「でも、勝手な行動はしないで。今回の事も貴方がまた勝手に行動したのよね? チームワークの場を乱さないように」
たまたま、うちの会社の取引先の代表と仲が良かっただけ。
次は無い。今回みたいな伝達ミスがあった時に、また勝手に取引先に勝手な真似をされる方が怖かった。
「英田秘書」
けれど、私の話が終わると、俯いている森元さんの前に平田さんが寄り添った。
庶務課で一番古株で、給湯室でも皆と悪口ではなく諌めようと眺めている人。
「貴方は弱者の気持ちが分からないんでしょうが、彼女はとても努力していますよ」
「……弱者?」
平田さんの言葉に、ちょっと距離を置いて此方を伺っていた庶務課の女子社員が頷く。
「小さなことかもしれませんが、森元さんは誰よりも早く出勤して、皆のデスクを拭いてくれたり、窓を開けて花を飾ってくれたり。ミスも多いけれど、自分から積極的に仕事を覚えようと頑張っています。何でもできる貴方には分からないでしょうが……小さなことから頑張ってますよ」