悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
何でも出来る貴方には分からないでしょうが。
その言葉が、妙に私の心を抉る。
私が最初から何でもできるのは、常に壁にぶつからないように自分の能力を過信せず向上させてきたからだ。
努力ずる姿を美しいと思わず、自分で何でもできるように、誰にも甘えたことが無かったからだ。
だから確かに、そんな囁かな頑張りなどどうでもいいとさえ思っていた。
「それは努力ではなく、何もできないのだからそれぐらい動かなきゃ吸収できないんじゃないの?」
立花さんだって一番早く出勤し、部屋に入ってすぐに目がいく場所に花を飾ってくれている。そんなささやかで慎ましやかな気遣いの方が称賛できる。
当たり前だと吐き捨てた私に、じわりと森元さんが涙を浮かべるのが分かった。
それをハラハラと見つめる女子社員達も。
「志野は努力はしないが、自分の限界を作らないように日々成長していってるよ」
「……巧」
「今回の事は、本当ならば会社にとって大きな不利益になるようなミスになったかもしれない。けど、上手く行ったならば原因や犯人について俺は言及しない。ただ、二度目は許さないよ」
優しく諭すように言うと、庶務課や受付の方へ視線をやる。