悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

「ただ、志野に嫉妬するのだけはみっともないから止めてくれ。嫉妬ではなく彼女の様になりたいと向上してほしい」
平田さんの方へ巧が優しく視線を向ける。

「見えない頑張りもあるんです。志野は表情に出さないけれど、社長の娘という肩書と重圧の中、潰されない自分を築いてきた。弱者の気持ちが分からないんじゃない。能力が低いのに努力しない人たちが嫌いなだけだよ」

刺々しくもなく、見下すような冷たい言い方ではない。
私が言っても周りは納得できないだろうけれど、私と肩を並べていた巧の言葉には素直に納得しているのが分かった。

平田さんたちはそれ以上何も言えなかったし、森元さんは傷ついたように巧を少しだけ見た後、皆の方へ戻って行った。

「お前は周りを黙らせるって言うか唸らせるぐらい実力があるから心配してなかったけど、何も知らない奴らに言われるのは許せないもんだな」

前髪を掻きあげながら、嘆息する巧に思わず笑みが零れる。

「俺は志野が小さいころから頑張ってる姿を知ってるし、その姿を尊敬もしている。だから、弱者側も俺達の事をちゃんと見るべきだと思う」

「巧が言うと説得力があるよね」

「本音しか言わないからな」

巧も常に嘘偽りなく、その姿は誰が見てもきっと憧れてしまうと思う。
こんな風に上手にフォローしてくれる巧に、甘酸っぱい気持ちが沸き上がってくる。

そうだった。巧はいつも私の前でも本音を言ってくれていた。

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