悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
止まったエレベーターの中、ボタンも押さず閉じ込められる。
その中で私は、抱きしめてきた巧の背中に手を回す。
それに気付いた巧が、更に力強く抱きしめ返した。
「お前がこんなに綺麗で、こんなに強い理由が分からない奴らは、俺が絶対に分からせてやる」
「ぷぷ。分からせてやるって」
「俺は、魔法が掛っていつか御姫様になるって信じてる夢見がちな奴らより、御姫様に生まれた故に直向きに頑張っている奴の方が偉いし、魅力的だと思う。――同じ目線だからかもしれないけど、その努力が一番分かってやれるのは、俺だと思ってる」
「……巧」
小さい頃から口数は少なかったけれど、心の中ではずっと私の事を認めてくれていた。だから私も巧の隣が安心して居心地が良かったんだと思う。
「そんな事、言ってくれるのは巧だけだよ。きっと今頃、庶務課の中では私は悪役だからね。ヒロインは――きっと森元さんみたいに健気で人間らしい失敗する愛らしい子なんだろうね」
エレベーターのボタンを押そうと身体をねじるけれど、ボタンを押そうと伸ばした手を掴まれて、指先を絡ませられる。
強引な巧の動きに思わず固まった。