悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
巧の熱い眼差しにに、身体が金縛りにあってエレベーターの中に閉じ込められた。
「お前は不器用なんだって。――自分でも気づいてないようだが、危なっかしくて……誰にも触れさせたくなんてなかったよ」
悲痛な顔で巧が私の顔を覗きこむ。
世界で唯一、私が屈服するとしたらこの人だ。
私よりも私を理解しようとしてくれている。
「でも……私は悪役なんでしょ?」
馬鹿みたいな擦れた言葉が、零れ落ちる。
可愛くない。
私なんてきっと誰よりも可愛くない。
「ヒロインになんて、なれないんだ」
ツツーっと流れた涙。
巧が指先で掬ってくれたら、頬がじんじんと温かくなった。
「俺の目にはお前は悪役になんて映ってねえよ」
言葉尻が乱暴になる。
乱暴でぶっきらぼうに言葉に、心が熱くなる。
言わないと。
「巧。私、森元さんの悪役でも良い。悪役でも構わないよ」
熱くなった頬にもう一度涙が零れた。
「悪役になっても、あの子に巧は渡さない。私、巧と離れたくない」
貪欲に、ひたむきに、会社の事なんて少しだけ忘れて。
私は、私自身が求めている言葉を吐けた。