悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
もしかして、社長が勝手に約束を決めていたのかもしれない。
そのまま退社できるように準備をしてから、内線を取った。
「はい。今度はちゃんと連絡伝達してくれたのね」
チクリと内線先の受付に言うと、向こう側は一瞬むっと黙りこんだ。
『私達は、タウンゼント様とのアポかお聞きしておりませんが、ちゃんと連絡伝達はして下さってるんですか』
「キースとは約束してないの。残念だったわね。今から降りるとキースに伝えて置いて」
一応巧は、秘書室でパソコンを打ちながら誰かと話し合いをしていたので、メールだけしたためてからキースの元へ向かった。
「キース」
受付まで迎えに行ってみれば、キースはロビーの待合室で優雅に珈琲を飲んでいた。
ゴージャスに髪を巻いた受付一の美女からの熱視線に全く応える素振りも見せず、私を見るなり手を上げた。
「シノ、会いに来てしまいました」
「社長の件よね。ごめんなさいね。もう少ししたら巧も降りてくるから三人で行きましょうよ」
「三人で?」
不思議そうにキースが目を丸くして聞き返したので頷くと、苦笑された。
「それは難しいんじゃないかな」
「難しい?」
「私と彼は、お互い邪魔な存在だから。仕事以外では会いたくないんじゃないかなって」