悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「貴方に聞いてるのよ?」
「あの、紹介されるまで此処を知らなくて。その日本語も怪しいぐらいです」
「でしょうね。入社する会社の事を勉強もしないなんて信じられないわ」
期待していた分、こんなおどおどした子が入社してきて、しかもうちの部署に配属したいだなんて。
「私は3カ国語、立花秘書も2カ国、室長は4カ国語の通訳ができる能力を持っているの。秘書室を希望するなら最低でも英語は日常会話ぐらい聞き取れるようにして」
「3カ国語! トライリンガルなんて格好いいですっ 2カ国語喋れる人ってトリリンガルって言うんですよね? 憧れますっ」
「……」
私のこめかみがピキピキと音を立てる。
「憧れるじゃなくて、貴方もなりなさいって言ってるの。無理なら秘書室にはお断りですので。行きましょう」
「志野」
咄嗟に下の名前を呼ばれて動揺してしまったけれど、すぐに取繕う。