悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

「あ、珈琲でいい?」
「私はまだ一度も、降伏宣言はしてませんからね」
「へ?」

立ち上がったキースは、私を見下ろす。
帰り途中の社員たちが、立ち止まって私とキースを見ている。

注目されてるってことは、会話の内容が聞かれてる?

「貴方をお姫様にしたい。彼はナイト止まりで十分です」
「キース!」
「煙草に失礼します。煙草から戻っても彼がまだなら二人で行きましょう」

ざわっと女子社員が騒ぐのと、視線が私の背中に集中していく。

本物のイギリス貴族で、オーストラリアを拠点に世界中で活躍している大会社の専務。
古城だって簡単に買える宣言しちゃうような、大物で、甘い笑顔の正真正銘の王子様。

心のほとんどを巧に鷲掴みされてはいるけれど、確かに夢見てしまうような存在だ。

私のように、キースが雲の上の存在なのだとしたら、巧はこの会社の女子社員たちにとって、私から見るキースみたいな存在なのだろう。

そう素直に思えたら、少しだけ森元さんへの沸々していた気持ちが収まっていく。

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