悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
ネクタイを緩めて、上着を脱いで、長い手で気持ちの良い風を切る音とともにダーツを投げる巧。
その姿にきゃーきゃー黄色い声援を上げる三人に、キースも巧もまんざらではないはずだ。
物心付いた頃から一緒に居るけど、巧がダーツだ出来るなんて知らなかった。
「どちらが勝ってるの?」
巧の肩に手を置いて覗くと、巧が腕を捲る。
「互角、かな。いい加減、ちょろちょろ五月蠅いから黙らせたい」
「あはは。同じ会社の女の子達が見てるのに、地が出てるよ」
ちらりと巧が皆を見る。肩に寄り添う私を見て複雑そうな顔の三人を見たがそのまま何も言わなかった。
「まあ、猫かぶってたわけじゃない。面倒だから誤魔化してただけ。勝手に憧れるのは勝手だけど」
「本当はそんな奴だよね」
苦笑した私を置いて、目の前の熱くなった試合に没頭し出す。
巧も負けず嫌いで一番じゃないと嫌な、熱血タイプなんだけど、大人になって落ちついたふりをしていたらしい。
「やっぱり英田秘書はずるいです!」
呑気に巧のダーツを見ていたら、頬を染めて酔いかけた森元さんが私に詰めよる。