悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「英国の王子様にもプロポーズされてるじゃないですか! じゃあ高永室長ください! 御姫様になれるんだからタウンゼントさんでもいいじゃないですかっ」
「あら、森元さんはお姫様に慣れるなら誰でも良いの。簡単で良いね」
巧が頼んだ赤ワインのグラスがテーブルに置かれていたので、手に持って勝手に一口飲む。するとグラスに赤い口紅が少しだけ付いた。
けれど、そのままでグラスを戻して笑う。
「私は巧に御姫様にしてもらえるから、別に本物のお姫様に拘ってないの」
「ずるいずるい! 私だって高永室長が良いです! 高級スーツにも関わらず、汚れるのも厭わないで、一緒に栄子さんのところで花壇を手伝ってくれたんです! そんな飾らない人が私だって好きですっ」
うるうると涙を滲ませた彼女に秘書課二人が取り囲んで肩を支えてあげていた。
泣き上戸なのだろか。面倒くさい子だな、と思ってしまう。
「巧は止めておいた方がいいよ? 王子様っぽい雰囲気だし肩書だけど、あいつ」
「志野一筋だしね」
後ろからひょいっと現れた巧が、グラスを奪う。
そして躊躇なく口紅がついたグラスに口を付けた。
わざと関節キスを狙う当たり、本当に強かだ。