悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「あんな、冴えない子をどうして栄子おばあさまは薦めたのかな。はっきり言うけど、今のままではあの子、ただのコネ入社。迷惑でしかないよね」
自分の状況が分からず、ふわふわと夢の中に居るような、今日から自分はお姫様になったかのような表情。
「能力が無くてあの子が恥を掻くのは、あの子の責任だけど。栄子おばあさままで悪く言われたら溜まったもんじゃないわ」
「まあ、一理ある。だがお前とは生きてきた世界が違うから、これから努力してもらうしかないよな」
他の秘書たちは、興味を無くしたのか既に仕事モードに切り替わっていて、社長のスケジュールに着いても巧と話し合っている。
「で、研修が終わったら誰があの子の指導係にするつもりなの?」
三年目で仕事をすっかり覚え出した子らには自分の仕事を集中してほしいし、中堅の子は管理が一番大変だろうし。
いや、副社長と社長の秘書である私と巧みが一番大変なのは当たり前だけれど。
「ああ。俺の父親が俺にやれって言ってたな」
「副社長が?」
「一から指導するのも勉強らしい」
「……信じられないっ」
次期社長の巧に、一般人の教養もなさそうな特に秀でたものがないようなあの子が?
まるで現代のシンデレラみたいな、一晩にして本当にヒロインになってしまったような状況だ。
「私がする」