悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
余りにも笑うので、一瞬でも緊張した自分がすごく馬鹿みたいでボンっと顔が火照る。
茹でタコみたいになってるに違いない。
「ちょっと。いつまで笑ってるのよ」
「悪い。可愛すぎてヤバいかもしれない。やっぱ離れて」
クスクスと笑いながら、巧が身体を離した。
「紅茶で良いなら俺が淹れとくから、取りあえず着替えて来いよ」
「……良いけど」
「このまま抱きしめてたら、キスだけで終われる自信が無くなったんだ。さっさと部屋に逃げて来い」
「ほ、本当に! 馬鹿じゃないの!」
慌てて靴を脱いで逃げ出すと、巧がケタケタと笑いだした。
……信じられない。きっともっと、28歳の恋人同士ってもっと大人っぽいことしてるはず。
私と巧は、まるで初めての恋人に戸惑ったり浮かれてる中学生みたい。
いや、中学時代からやり直してるみたいだった。
階段の途中で立ち止まって振り返ると、巧はキッチンでもうカップをカチャカチャと取り出している音を立てていた。
その音を聞き、急いで私も着替えに駆けあがった。