悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
甘いミルクティーを用意してくれていた巧が、緩めただけのネクタイを肩にかけてるのを見て、見惚れてしまった。
給湯室で無駄な雑談をしている女子社員達よりも、きっと巧の淹れたミルクティーの方が美味しいと思う。
そんな、纏まらない気持ちがごちゃごちゃと心の中で暴れ出す。
幸せだと感じるだけじゃない、心地よい甘酸っぱさ。
「どうした? 甘すぎたか?」
不安げに聞いてくる巧に、体中に広がっていく紅茶の温かさの様な、ジワリと広がる甘い気持ちを伝えたくて首を振る。
「ううん。数日前までは、不安だったから。巧の気持ちが見えなくて」
「お前の方が全然見えなかったけどな」
巧が苦笑しつつ、上からカップを掴むと器用に飲みだす。
「俺は本気だよ」
カラカラに乾いていた喉を潤すのは、世界で一番甘い巧の声だった。
「だから俺と結」
「ストップ! 待って!」
コトンと小さく音を立ててカップを置く。
「甘えていいって言ったのは、巧でしょ? で、勇気を出してプライドも捨てて甘えたけれど、もう一つだけ甘えさせてもらうなら、とびっきり甘えたい」