悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「は?」
「まず室長直々にあの子が学ぶのに此方にメリットがない。すぐに辞めたり逃げ出されたら、時間のロスよ。私の方がまた時間があるし」
素直に連日連夜飲まされて、へとへとに帰ってくる巧を心配したから――とは言えない。プライベードの事を持ちこむ感じで、切りだせなかった。
自分の可愛げのなさにはもう何度もげんなりしてるから諦めている。
「英田さんは更に厳しいかと思います」
立花さんが言いにくそうに私に耳打ちしてくる。
「どうして?」
「オーストラリアの取引では向こうが英田秘書を希望されてるので」
「それ初耳なんだけど」
オーストラリアは大学の姉妹校に一年だけ留学したことはある。
「言い忘れてたけど、俺が許可しといた」
「何でよ!」
エレベーターに乗り込むと、巧は面白くなさそうな不満顔で私を見る。
それも気に入らない。
他の人にはもっと甘い顔を見せるのに、私には仕事みたいな機能的な顔しかしない。
「取引会社の専務が、キース・タウンゼント。知ってるだろ?」
「嘘。キースが?」
「オーストラリアの世界最大のデパートの会社の専務がお前に好意を寄せているキース。これでお前が選ばれないわけないだろ」
「……何よ、その言い方」
刺々しい。連絡漏れはそっちのミスなのに。