悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
『たかなが たくみ。ごさい』
初めて会った日は、栄子おばあさまとおじいさまの還暦パーティーだった気がする。
赤いちゃんちゃんこは恥ずかしいと、深紅の薔薇が描かれた着物と真っ赤な袴で登場した二人を、私がぼーっと見ていた時だった。
『おなじく、えいだ しの。ごさい。たかながって、ぱぱのかいしゃのふくしゃちょう?』
『そう。おれたち、こんやくしゃらしいよ。フィアンセだって』
『フィアンセ?』
『もうすこし、えいごベンキョウしないと、かいしゃではたらけないからな』
ちょっと偉そうに、フィアンセって言葉を知らなかった私にそう言うと、何故か隣に並んで立った。
『けっこんしような、おれたち』
『なんできゅうに?』
巧が、幼くあどけない顔の癖に、まっすぐな芯のある瞳で私を見た。
その時には既に私は、巧の瞳がチョコレートみたいだと思っていたらしい。
『だって、立ってるしの、きれいだった。つよそうなおひめさまみたい』