悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「まあ。でも、サイズぴったりで良かったな」
照れくささを隠しているのが分かる。
私の薬指に、寝ている間にこっそり巧がはめてくれたのだと思うと、凄く嬉しい。
言葉が出て来なくて震えてしまったけれど、嬉しさを伝えたくて巧の背中に抱きついた。
「ありがとう。巧。――嬉しい」
「……こんな可愛い反応が見れるならもっと早く渡せば良かった。だけど」
首をひねって私の顔を捉えると、にやりと笑う。
「抱きつくなら前からの方がいい。その方が照れたお前が良く見える」
「……馬鹿っ」
小さく毒付きながらも、振り返った巧の胸に飛び込んだ。
薔薇の香り、朝だと教えてくれる珈琲の香り、そして指に飾られた指輪、巧の体温。
全てが私の胸を熱く、ドキドキさせて締めつける。
幸せだと、締め付ける。
これ以上ない幸せの中、優しく巧のキスが落とされたのだった。