悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「それは、高価な物でもなく流行りのブランド品でも無く、彼の気持ちが一番嬉しいと思う、貴方の美しい心が映し出された答えだと思いますよ」
「……キースって、私より複雑な日本語使えるよね」
照れくさかったけれど、キースにそう言ってもらえて胸が擽ったい。
「今さら惚れても、遅いですからね」
お茶目なウインクをしながらキースが得意げに言う。
確かに。
本当のお姫様にはなり損ねたんだから、遅い。
でも後悔はしない。
それほど、巧は私がずっと思っていた相手だから。
荷物のチェックも終わり、オーストラリア行の便の乗車案内が響く。
「それでは、次は仕事で」
「ええ。タヌキ二人を宜しくね」
遅れてきた副社長と巧がすぐにキースの元へ駆け寄り、手を握って別れの挨拶をしている。
その後ろに何故森元さんがいるのか本当に理解に苦しんだけれど、この雰囲気の中では我慢しておいた。
「……では、シノ。お幸せに」
挨拶で手を伸ばされ握ると、そのまま強引に手を掴まれ、キースの唇まで持って行かれた。
柔らかく、熱を帯びている唇で手の甲をキスされると、ポカンとしている私に目を細めて笑いながらゲートの方へ、優雅に去っていく。
「……英田秘書」