悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
巧が秘書室に入ってくると、社長室の方を指差した。
「二人とも来いってさ」
「うわあ……」
嫌な予感がして顔が歪んでしまう。
森元さんだけは意味が分からず私達の顔を交互に見てはポカンとしていた。
「ごめん。竜崎が帰ってきたらお土産渡しといて」
「……はい」
心配そうな立花さんに強きに微笑みつつ、秘書室を出る。
「人事異動の件だよね」
「まあ、そうだな」
巧は表情を変えずに私の隣を歩く。
そんなに慌ただしく人事移動も決めなくて良いのに。
多分最終確認みたいな、私達の意思を確認するためのものだろうけど。
「あ」
「なんだよ」
「さっき調べてたら、接待と銘打って領収書が増えてたの。たぬき達、私ら二人が居ないこの期間に夜な夜な飲んでる。チェックして経費で落とせないのは絶対に突き返してやる!」
「それは、全力で俺も手伝うよ」
二人でぎらぎらと目を睨ませながら社長室の扉をノックした。
ハワイでの幸せな余韻を吹っ飛ばすような未来が現れようとも、二人ならば乗り越えて行こう。