悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
エピローグ。
たおやかに。
しなやかに。
艶やかに。
明晰に。
頭の天辺から足のつま先まで、私はどこもかしこも完璧でありたかった。
それは、私を初見で『格好いいお姫様みたい』と巧みに言われたからかもしれないし、私のプライドが本能的にそう思ったのかもしれない。
強気に、誰にも負けないようにと前だけ見てきた。
そのせいで恋愛は全くわからないで、婚約しているのかさえ曖昧な関係のまま数年経った。
なのに、いざ私が恋愛初心者で、ルールを無視してでも思いを伝えればいいと分かった直後、半年もせずに私たちは結ばれた。
素直に、好きな人に甘える。
それがどんなに難しいのか、私の事を悪役だの意地悪だの噂している女子社員達に言ってやりたいぐらいだった。
「ふー。こんなものかな」
台車の上に、デスクの中に会った私物を全て乗せ、雑巾で隅々まで拭き取る。
秘書室の扉を開いてすぐに目に飛び込んでくる花を変えるのは、立花さんから森元さんへ自然と担当が変わったのと私に辞令が下りたのはほぼ同時だった。
とっくに、巧が使っていた秘書室長のデスクは蛻の殻になっている。
「……私の席に森元さんが四月から座るって思うと感慨深いよね」