悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「そうですね。ありえませんね」
「だからお二人とも酷いです! でも、お二人がホントは優しいって私は分かってますからね」
「ぷ。優しい。ぷぷ」
「竜崎くん、笑わないで」
ゴロゴロと台車を動かしながら、私は巧が居なくなったデスクに自分の荷物を置きだした。
「森元さん、悪いんだけど手伝ってもらっても良い?」
「え、はい?」
そんなに一つ一つは重くないのだけれど今は慎重にしておきたい。
「貴方って園芸とか花だけには詳しいじゃない? 仕事は覚えるの遅いけど」
「一言余計です。まあそうですけど。このファイル、ここで良いですか?」
「うん。そこでお願い。じゃあ、この薔薇の花言葉って知ってる?」
桃色の薔薇の花を台車の陰から取り出すと、森元さんの顔がみるみるうちに真っ赤になる。
「え、え、ええー!」
「何? 花ことばって何?」
「今、俺が調べます」
立花さんと竜崎が慌てる中、森元さんが私から台車を奪った。
「わ、私が全部します! 座っててください」
「大袈裟だね。でも良い反応。ありがとう」
桃色の薔薇の花びらに口づけすると、ついつい頬が緩んでしまった。