悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「言ってなかったっけ?」
『本日の三種のチーズ盛り』という何が出てくるか分からないチーズの皿から、赤ワインと相性の良いチェダーを摘まむと、巧の顔が不機嫌そうなオーラを漂わせているのが伝わってきた。
「……別にキースは日本が好きだったから日本人の私に親切だっただけで、ただの友達だったし、言う必要がないって思ってたのかも」
「逆だと思うがな」
「……その言い方何?」
逆ッて何よ。友達じゃないから言えなかったって思ってるの?
「なんでそれで巧が不機嫌になるの。まああの会社はずっと副社長が懇意にしてたから面白くないのは分かるけど」
「そうだ。全く全然一ミリも面白くない」
そりゃあ私も自分が知らない内に、栄子おばあさまの推薦で入社する子がいるなんて面白くない。
でもキースはそのことは比べるのも失礼なほど、完璧で申し分ない人だと思う。
けっこう拘りは強いし、礼儀やマナーには五月蠅いかもしれないけど。