悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「あんたも大概頑固よね」
「俺が頑固じゃなかった時なんてあったか?」
「ないない。だから何か気に食わない琴線に触れてるからこうして私の呼びだしに乗り気だし。何か吐きだしたかったんでしょ?」
チーズを食べながら何気なくそう言ったつもりだったのに、突然巧の顔がくしゃっとなった。
それが破綻した笑顔だと気づくのに数秒かかってしまった。
「琴線じゃなくて、逆鱗。お前って頭いいのに抜けてんだよな」
会社で見せる甘い笑顔じゃなくて、くしゃくしゃの子どもみたいな笑顔。
いつもの気取っている巧みじゃない素の顔に、私も気が緩む。
巧を王子のように憧れている女子社員にこの顔を見せてあげたいぐらいだ。
「お互い様だよ。家でも会社でも気が休まらないから私たちは此処に集まるんでしょ?」
「そうだ。お前とこうして防御服脱いだ時が一番リラックスできる」
ネクタイを緩めながらため息を吐く。
そんな憔悴しきった仕草でさえ、悩ましげで艶があるのだから手に負えない。
「はあ。話が反れたが、もういいか。今のお前じゃ安心だ」
何も分かってないってやんわりと馬鹿にされた気がした。