悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
「何それ。今日の巧とは飲んでも楽しくないっ」
「お前、仕事は出来るのにどうしてわからないんだろうな。そこが楽しいけど」
ククっと笑うと、目を細めて私を見た。
眩しいものでも見るかのように、目を細めて柔らかく笑う。
この素の巧を知っているのはきっと私だけ。
巧も巧で、私は仕事は出来るが他はおざなりだといつも小馬鹿にするから分かってくれているのだと思う。
当たり前なんだけど、巧と婚約の話が出た時から他の男と恋愛したいと思ったことは無かった。
それどころか、私の磨かなきゃいけない自分の能力を知って、巧が社長になった時私が全力で支えていきたいと思っている。
思っているだけで、届きやしない。
なのに言えないのは、巧の気持ちが見えないから。
「帰ろっか。明日、出張に着いていくんでしょ」
「いや、竜崎に交代した。が、お前は会議に同行だから帰るか」
面倒臭そうに立ち上がった巧に、私も急いで席を立つ。
七勝十一敗。今日は私が払う番だ。
「そういや、ずっと携帯点滅してるが仕事じゃないよな」
「嘘」