悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

仕事中で、しかも余所の部署で社長の娘を下の名前で呼ぶのはどうなのだろうか。

英田さん、と呼ぶと他人行儀で寒気がするし社長と見分けがつかないと頑なに下の名前で呼ぶので、もはや何を言っても暖簾に袖を通すだけだ。

「室長。あの森元研修生が勝手にあなた宛ての電話に出てたんだけど、どう説明してくれるの?」

「――え?」

にこにこと笑ったまま表情が固まった。

「たまたまキースの所だったから私が謝罪すれば済むけど、大きな借りを作ったからね、忘れないで」

「うわ、まじか」

口元を手で隠しながら、ため息を隠す。

「駅前の新しく出来たチーズ専門店ね」
「は、お前、待て」
「室長が可愛いカフェでチーズフォンデェするの楽しみにしてるから」
「……オープンしたばっかで絶対人が多い」
混雑してざわつく店よりも落ちついた場所が好きな巧なのは分かっている。
でも、たまには巧を連れて注目を浴びるのも悪くないかもしれない。

「すみません、申し訳ありませんでした」
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