悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
と言いつつも寄り道をしていたら、隣に立花さんがいきなり現れた。
「素直じゃありませんね」
ふふっと笑いながら、手にはコピー機の印刷用紙を持っている。
「なにが?」
「強く言われると身が引き締まりますから私は有りがたかったですよ。その後にこうして珈琲を差しいれして下さる心使いも、アメとムチみたいで大好きです」
「ソレ、褒めてるの?」
と言いつつも、三本珈琲を持って匠たちがいる会議室へ向かう。
笑顔で私を見送りながら颯爽とエレベーターに乗り込んだ立花さんには、苦笑してしまった。
けれど、仕事するならあれぐらい頭の回転が早い方が助かるかな。
「うう。ごめんなさい。私、私のせいで巧さんにまで迷惑かけてしまって」
「いいって。気にしないで。でも志野が言っていることは間違いじゃないから今度から気を付けるんだよ」
まだ泣いていたのか、と思わず嘆息してしまった。
とく見ると、長テーブル越しに向き合って座っている二人。
森元さんはうちで私がアイロンをかけてあげたハンカチで、目元を拭っていた。
匠が渡したんだろう。
「匠さんって優しいですよね。普通なら私みたいなノロマでぐずな人、英田秘書みたいに冷たくするのが当たり前なのに」
「志野は冷たくないよ」
巧は間も置かず即答すると、彼女とやんわり距離を置く。
そのまま窓辺で外を見だしてしまった。
入っていきにくい状況だった。