悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?

不意に真面目な声のトーンになって、思わず目を見る。
射抜くようなまっすぐな瞳。ビターチョコレートみたいな苦みが広がってくる茶色の瞳。苦みを感じるのは、巧の言葉のせいだけれど。


「酔っ払った弾みで……なんてことはアンタはしないって信じてるけど」
「分からないよ? 俺だって枕元に置かれたブラ見てクラクラするんだから。寝るとき外してるんだなあって」
「なっ 観察しないでよ。馬鹿じゃないの!」

驚いて耳まで真っ赤にすると、口元に手を置いてケタケタと笑いやがった。

長い脚を組みかえて控え目に笑う姿でさえ絵になるのが悔しい。

「取りあえず私はもう行くから。鍵、返してね」

テーブルにキーケースを置くと、また前髪を掻きあげながらひらひらと手を振った。

「シャワー浴びたら俺も向かう」

まるで同棲している恋人みたい。
けれど私たちは幼馴染以上恋人未満の位置に居るのは変わらない。


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