ストーカー気質からの脱却を試みる
知らないふり
《今日は会社の飲み会なんだ》
〈そっか。飲みすぎないように気をつけてね〉
嘘だ。
気をつけてほしいのはアルコールの摂取量じゃない。
はるという女だ。
今まできょうくんには一切女の影がなかった。
浮気の心配をしたこともないし、なぜだか無条件に信頼できるような、そんな雰囲気を持った人だった。
「ま、今までも浮気で修羅場とか経験したことないけど」
そもそもそんなのめり込んだ相手がいなかったから、するならどうぞしてくださいって感じだったのかも。
でもきょうくんの事となるとすっかり動揺する自分がいた。ことにも動揺する。
きょうくんがわたしを好きな気持ちより、わたしがきょうくんを好きな気持ちの方が大きくなってしまうような気がしてちょっと怖い。