私の王子様は、冷酷なんかじゃありません


そのまま力ずくで机に押し倒されて。



私がどんなにどんなに声をあげても、
私の口をふさぐ渚さんの手にすべて飲み込まれた。

私が目でやめてと訴えても、渚さんの手が止まることがなかった。


男の目をした渚さんに、意識が飛ぶ程の恐怖を感じた。

悔しくて悔しくて怖くて怖くてたまらなかったあの日の記憶を、これ以上思い出す事を脳が拒否したその時だった。




───え?




「悪い。

……もう兄貴の事は考えなくていいから」




そう囁く類の声が耳のすぐそばで聞こえて。

気づけば私は類の腕の中にいた。

いきなりの事に戸惑うけれど、
類に抱き締められて優しく頭を撫でられているうちに、安心してずっと我慢してきた涙が溢れた。

ずっと恐怖で固まっていたはずの体が、
類の腕の中で、ゆっくりと柔らぐのがわかる。
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