私の王子様は、冷酷なんかじゃありません
目の前には、感情の読めない顔をした王子。
は、はやくなにかいわなきゃ…!
「あっ、あの、先輩…!気絶しちゃってすみませんでした!」
「………。」
先輩、という呼称があっていたのかはわからない。
でも残念なことに、学生時代に王子、王子、としか呼ばれていなかった王子の名前を私は覚えてないなかった。
気まずい沈黙。
うぅ、やっぱ気絶しちゃってすみませんでしたはおかしかった!?
そもそも、家政婦の仕事提案されたこととか、夢だった!?
そんなことをぐるぐる考えてまた毛布をかぶりたくなった時。
「いいよ」
王子の優しい声が部屋に響いた。
今までずっとポーカーフェイスだった王子が、そういって優しく微笑む。
心臓が、どくん、と跳ねた。
「……っっ」
いいよって、なにが?どれが?
ずっと思っていたんだけど、王子ってすごく言葉足らずだ。
それにすごくずるい。
いつもポーカーフェイスで冷たい顔してるのに、
そんな顔して微笑むなんて、反則すぎる。