私の王子様は、冷酷なんかじゃありません
「え……?」
おそるおそる後ろを振り返る。
案の定王子はその場を動いていなかった。
そして……ドキッとする程優しい顔をして私を見て立っていた。
ごめん、と口の形だけで謝って、王子がゆっくり歩いてくる。
そして、私の目の前で足をとめる。
「ごめんごめん、馬鹿にしたわけじゃないんだよ?」
そう言ってポンポンっと頭を撫でられた。
「行こっか」
「は、はい……」
歩き出した王子に、とことこついていく。
王子の歩くスピードは、男の人にしては遅かった。
それが私に合わせていてくれているのだということに気づいて、胸がトクンとなった。
ねぇ王子。
私、イルミネーションなんて目に入らなくなっちゃったよ。
さっきから、王子の事で頭がいっぱいなの。
王子の事しか見えないの。