私の王子様は、冷酷なんかじゃありません



「い、いきなりキスなんてしてごめんなさい!今までありがとうございました……!

私、ここを出ていきますね!

王子は私の命の恩人です。本当にお世話になりました」


そう言って、王子に深々と頭を下げる。


あ…………れ。


なんでかな。告白してすっきりしたはずなのに、なんだか泣きそうになる。



どうして?

もう王子の側にはいられないから?
ふられるのが怖いから?


「葉月、顔あげて」


頭から、そんな王子の優しい声がふってくる。


この声を聞けるのも……もう、最後。

そう思うと、もっと泣きそうになって。


顔をあげて、こぼれそうになった涙を、
唇を噛んでこらえた。

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